地震予測においてボーリング調査が行われる理由

地震予測には様々な手法がありますが、内閣府の防災・地震予測に関する資料によると、地表から浅い部分の地震動伝播について、表層地盤構造にかかる情報は主にボーリング調査で得ることが紹介されています。

当ページでは、ボーリング調査と地震予測に関連する学術的な見解等をご紹介しています。

※出典：内閣府｜4.地震動予測
https://www.bousai.go.jp/jishin/tokai/senmon/2/pdf/2-1-1-4.pdf

地震予測と断層モデル

これまで蓄積されてきた断層調査や構築された断層モデルを吟味することにより、ある程度、今後発生する可能性のある地震を予測できる可能性が出てきました。現在、断層と地震予測の関係について、様々な研究機関が調査・考察を進めています。

活断層と地震予測との関係

地震を予測する際には、予想される場所と時期に加え、規模も重要なテーマとなりますが、これまでの学術的知見から、地震の規模は「活断層の長さ」と「活断層のズレの量」に比例することが分かっています。

このうち「活断層のズレの量」は「活断層の長さ」に比例する傾向があることから、地震を予測するためには、つまるところ「活断層の長さ」に注目することが重要とされています。

網の目のように張り巡らされている断層を1つずつに区切ることは簡単でありませんが、過去の地震発生データもあわせて検討することで、おおむね同じような場所で、同じような間隔で、同じような規模の地震が発生していることが分かります。

これら過去のデータと活断層の長さをあわせて考察することで、ある程度の地震予測が可能と研究者たちは考えています。

断層の形の分析も地震予測に有効

断層は一直線で平面的な形ではありません。様々な形を描き、かつ様々な方向からの力が加えられています。

これら断層の形や力の向きを地下探査などにより丁寧に調査すると、ズレが生じやすい空間変化の把握が可能。この調査結果は地震を予測する際の重要な手がかりになるとされています。

活断層帯の調査による連動型地震の予測

国内には約2,000の活断層が分布していると考えられていますが、これらの活断層のうち、近いエリアで帯状に分布している活断層をまとめて「活断層帯」と言います。

活断層帯にある一部の活断層がズレを起こしたことを想定し、破壊の伝播方向を推定することで、連動型地震の発生予測が可能とする研究もあります。

断層モデルとボーリング調査

表層地盤の伝播特性評価方法には主に2種類がありますが、うち1つではボーリング調査が不可欠とされています。以下、評価方法の概要について、内閣府が公表している資料から一部引用してご紹介します。

■入力値

• ボーリング地点ごとの工学的基盤での加速度波形

■計算手法

• 等価線形法重複反射法理論による計算
• 工学的基盤まで掘削されたボーリング柱状図を収集し、そのN値等のデータから地表から工学的基盤までの地盤モデルを設定
• 計算で得られた加速度波形から最大加速度を抽出し面的に広げる

■データ

• 工学的基盤までのボーリング柱状図
• 対象範囲でボーリングが均等に分布していることが理想
• ボーリングは位置、内容がディジタル化されていることが必要

（後略）

■出力結果

地表での加速度貨幣

• 表層自慢の伝達関数
• ボーリング箇所単位
• 最大加速度等のコンター

※引用：内閣府｜4.地震動予測
https://www.bousai.go.jp/jishin/tokai/senmon/2/pdf/2-1-1-4.pdf

地震予測に関する取り組み

ボーリング調査による地震予測に関する研究については、多くの研究機関から様々な論文が発表されています。すでに実績を出した研究も少なくありません。主な研究成果を3つほどご紹介しましょう。

大都市大震災軽減化特別プロジェクト

独立行政法人防災科学技術研究所は、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」の一環として、これまで房総半島鴨川市西部や神奈川県足柄平野などで2000m級のボーリング調査を行っています。平成16年以降は、大都市圏における強振動の予測に役立てるため、都市部を対象に1000m級のボーリング調査を行う計画です。

※参照：大都市大震災軽減化特別プロジェクト│文部科学省（https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu6/sonota/04080901/taisei/015/010.htm）

地震予測に要する先行現象の発見

東海大学海洋研究所・地震予知研究センターを中心とした研究グループは、2011年3月の東日本大震災の先行現象として、岩手県大船渡市にある五葉温泉の源泉の水位が10m以上低下していたこと、および水温が1～2℃低下していたことを発見しました。

同様の調査を行うためには、五葉温泉のような非常に深い井戸が不可欠。ボーリング調査の可能性が期待されます。

※参照：長尾教授らの研究グループが地震予測に要する先行現象に関する論文を発表しました│東海大学（https://www.u-tokai.ac.jp/news-campus/16489/）

海底活断層の地震発生時長期予測

島崎邦彦研究員を代表とする大分大学・京都大学等の研究グループは、地震発生の長期予測モデルの考察において、別府湾海底断層のボーリング調査を実施。採取した試料の性質や構成比を分析し、近接する海底断層の相互作用に関する基礎的データの収集に役立てました。

※参照：海底活断層のボーリング調査による地震発生時長期予測の研究（https://www.jstage.jst.go.jp/article/afr1985/1986/2/1986_83/_pdf/-char/ja）

まとめ

地震の多くは活断層のズレによって生じます。そのため、地震を予測するためには活断層の調査が不可欠です。活断層を調査するためには、その前提として地表に穴を掘らなければなりません。穴を掘る道具はボーリングです。

極めてシンプルな理屈ですが、地震予測にはボーリング調査が非常に重要であることを理解できたでしょうか。